機能訓練指導員の柔道整復師

整骨院辞めて時間に余裕ができたから始めたブログ。医療・介護・働きかたについて書いていきます。

高齢者の窃盗症?介護施設が頭を悩ます利用者の窃盗癖

こんにちは@hitokutokumeiです。高齢者による犯罪が増えています。後述の調査によれば高齢者の犯罪の中で窃盗が65%を占めているようです。今回は通所介護施設の利用者による窃盗行為について経験と対策を記事にしました。

高齢者の窃盗行為

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私が介護施設で働き始めてショックだったことの一つに、利用者による窃盗行為があります。

窃盗癖のある利用者はコソコソと施設の備品や消耗品を盗むのです。いつもリハビリやレクリエーションで仲良く触れ合っているのに裏切られた気持ちで悲しくなります。この窃盗行為は露見して注意されても治りません

なぜ窃盗行為に及ぶのか、施設側はどう対応したらよいのかまとめました。

どんな人が窃盗するのか

私が今まで見てきた窃盗癖のある利用者は4人です。その内男性は1人、女性は3人です。一見女性が多いと感じますが、私が勤めてきたデイサービスは利用者全体の女性比率が高かったので犯行に男女による差ははっきりしません。

窃盗癖利用者の共通点は身勝手で自己中心的な性格であること、年齢は80歳以上くらいです。ちなみに3人は90歳越えのヨボヨボの高齢者でした。

身勝手で自己中心的な性格というと悪口のようになってしまいますが、実際性格のためにトラブルメーカーとなっていました。気に入ったリハビリ器具を占有して他の利用者を困らせたり、気に食わないことがあれば声を荒げることもあります。

他の共通点はあまりありません。要介護度も低い人から高い人までいましたし、家族と同居の人もいれば独居、老人ホーム入居者と住居環境も様々でした。貧乏で生活保護の人もいれば比較的お金持ちの人もいました。

どんな物を盗むのか

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一番盗まれるものは何といっても「ティッシュ」です。しかもこれには盗み方に共通点があります。箱ごと盗まず1枚1枚抜き取るのです。時間をかけてバッグやポケットに隠します。

これに続いてトイレットペーパー、おしり拭き、スティックシュガー、コップ、コースター、ボールペンなどがよく盗難されます。

これらの共通点はどれも施設の備品、消耗品であること、普段自由に使ってもらっている物ということ、安価な物であることなどです。

必ずしも必要な物を盗むというわけではなく、単に手につきやすいから盗むようです。以前同僚の介護士がある利用者のティッシュ窃盗を発見し問いただしたところ「こんなに沢山ティッシュはいらないけど、欲しいから持って帰る!」と支離滅裂なことを言い放っていました。

窃盗のタイプ

私は介護施設で発生する高齢者の窃盗には2つのタイプがあると推測しています。

一つは他人の物を自分の物と誤認しているタイプです。認知症(主にアルツハイマー型)による妄想で自分の物と思い込んでいます。このタイプは盗むという意識はありません。誰がいようと関係なく堂々と盗みます。当人を注意して返却するよう説得すれば「私の物だ!」逆上します。

もう一つは何らかの原因で自己抑制が効かなくなったタイプ。いわゆる窃盗症・クレプトマニアと呼ばれるのはこのタイプで、見張っていなければ常に窃盗を行います。ホントに四六時中です。ずっとティッシュをバッグにしまい込む作業を続けます。このタイプの比率が多いと思います。

このタイプのポイントは施設の備品はあくまで他人のものであるという意識はあります。注意すればその場では盗んだことを認めるケースが多いです。

どちらも認知症が関係していると考えられますがよくわかっていません。

生活に困窮“していない”窃盗

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高齢者の窃盗について少し古いですがニュース記事と法務省の調査を見つけました。

増え続ける「高齢者の犯罪・窃盗・万引き」の犯罪心理:犯罪の理由と防犯対策(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース

第二部 特集「高齢犯罪者の実態と処遇」 - 法務省

この中で犯行動機についていくつかが触れられていました。

 窃盗事犯者の犯行動機・原因について,主なもの三つまでを調査したところ,高齢窃盗事犯者において,男子では,「生活困窮」による者が74人(66.1%),次いで「対象物の所有」目的の者が41人(36.6%),「空腹」による者が21人(18.8%)であった。食べるのに困って飲食物を盗む者が多いことが分かるが,一方で,「遊興費充当」の者も17人(15.2%)いた。女子では,「対象物の所有」の者が17人(63.0%)であるのに次いで,「お金を使うのがもったいない。」などといった「節約」による者が16人(59.3%)であり,「生活困窮」による者は6人(22.2%)と男子に比べると顕著に少なかった。

第二部 特集「高齢犯罪者の実態と処遇」 - 法務省

介護施設で起きる窃盗は上記の内「対象物の所有」と考えられます。先ほど述べた自己抑制が効かなくなったタイプがこれです。

私の出会った窃盗癖利用者の中には貧乏な方もいましたが、生活困窮するほど追い詰められていませんでした。そもそも金銭的に困窮するほどならデイサービスを利用できませんし、自分で使いきれないほどのティッシュや複数個のコースターを持って帰る意味がありません。

施設側の対策

窃盗癖は治りません。施設側は盗ませない環境作りを考えなければなりません。

盗みそうな物を窃盗癖利用者の周りに置かない

盗まれやすい物は手の届かない場所へ移しましょう。利用者の入れない場所や背の高い棚の上などがいいと思います。

盗まれてもわかるように備品に施設名や番号を書いておく

あらかじめ盗まれやすい物にしるしをつけておきましょう。盗んだものを発見したときに証拠になります。もししるしをつけた物を持ち帰られても、利用者の家族から連絡が来る可能性があります。

普段使う物を窃盗癖利用者の私物に置き換える

ティッシュやコップを施設側が提供せず、私物を持参するか施設側が預かるように促しましょう。

リハビリやレクリエーションに途切れなく参加させ盗む時間を与えない

人の目があれば窃盗しづらくなります。運動や他の利用者との交流を図り、気持ちを窃盗以外に向けさせましょう。

おわりに

ある程度規模のある通所介護施設ならどこでも一人や二人窃盗癖のある利用者がいる、あるいはいたと思います。

最も怖いのは利用者同士のトラブルです。もしも施設の備品に飽き足らず他の利用者の物を盗むようになれば大きな問題となるでしょう。窃盗癖があることを知りながらも対策を怠ったと責任問題になりかねません。

私が転職する前、利用者の所有物を別の利用者が盗んだことがあったそうです。ちなみにその後かなり揉めて被害者は利用を中止し、盗んだ側の利用者は厚顔にも利用を続けています。普通逆だろと思いますし、正直胸糞悪いです。

未然にトラブルを避けるため対策を講じましょう。

 

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